<自分を気味悪がらない変人教授との出会い。そして。>
少女は孤独だった。小さい頃から何でも覚えられた。言葉を覚えるのも早かったし、忘れることができなかった。少女は不運にも天才だったのだ。
8歳のころ、転勤する両親について行ったドイツで天才と認められ、15歳で数学の博士号まで取った。でも、少女の周りには子どもの姿はなく、気味悪がる大人たちに囲まれて孤独なまま17歳になった。
17歳の夏、祖父の訃報を受けて帰省した北海道美唄市。
懐かしい故郷の炭鉱遺産の見物に行った先で、立て坑櫓をじっと見上げて動かないハットをかぶった黒いスーツ姿の男を見つける。その男は少女を見つけると、なれなれしく声をかけてきた。
「あ?あんた、めずらしいな。こんなところに女の子ひとりなんて。」
「あ、ボクは. . . 」
その不思議な雰囲気の男に少女はなにか安心感を感じた。少女は自然と堰を切ったように話しはじめた。自分が美唄生まれだということ。数学者であるということ。孤独なこと。
「ふーん、あんたおもしろいな。いる場所がないなら、ワシのところで助手でもやらないか?」
「え. . . ?」
「ちょうど、研究上で統計学が詳しい人がいてくれると助かるところだったんだ。えーと、助手じゃわからないか。Assistent?」
「え. . . ?」
「ちょうど、研究上で統計学が詳しい人がいてくれると助かるところだったんだ。えーと、助手じゃわからないか。Assistent?」
「. . .Welche Personen sind Sie?(あなたは何者なの?)」
「Kozakai. Professor für Management. . . Und. . .ein Genie?(コザカイ。経営学の教授をやってる。それに. . . 天才ってやつ?)」
「Oddball. . . (へんな人)」
「え?なに?」
「. . . ボクが怖くないの?」
「つまんないこと考える子どもだな。あんたはあんたでしかないだろ。あんた、名前は?」
「. . .常盤遊美. . . 」
少女が18歳の春。その少女、常盤遊美は玉川大学の工学部にいた。コザカイの助手として、彼の研究を手伝うために。そして、学生たちに勉強を教えるために。
少女はまだ無口ではあったが、もう孤独ではなかった。
少女はまだ無口ではあったが、もう孤独ではなかった。
常盤 遊美(ときわ ゆみ)
・北海道美唄市生まれ 18歳。
・ドイツからの帰国子女で、飛び級して博士号まで持ってるコザカイ研の助手。
・ちょっとずぼらな感じ。
・いつもだらだらしてて、あまり人とは話さない。
・お菓子ばっかりたべてるせいで、あまり大きくなれない。
・ゼミ生よりも年下なので「ゆみちゃん」って呼ばれている。
・女子学生たちには子供扱いされて、お菓子もらったり頭なでられたりしてかわいがられている。
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